謝罪のプライド

電車に揺られている間に、メールが届く。
差出人は亜結だ。

【来週、彼と会って欲しいんだけど】

昨日の今日でもう話を進めているのか。
珍しい。いつもどーんと構えているのに、今回ばかりは弱気なのか?

【いいよ。どこに行く?】

返事はすぐにやって来た。

【この間の店、美味しかったからまた行きたい】

「げっ、マジ? 私はもう三回目だけど」

思わず呟いたら近くに立っていた人が何事かと私を見たので恥ずかしくて俯いた。

流石に一ヶ月に三回も行くのはどうよ、と思いつつ他の店で飲む時より胃もたれがしないのは事実だ。
それに落ち着いて話せるってのも。
【U TA GE】は個室風になってるせいか、隣の席の声はあまり響かない。
よっぽど大騒ぎする客が入れば別だろうけど、そういうのには数家くんたち店員がすぐ対処してくれるし。


【いいよ。来週の水曜でいい?】


週の真ん中だけれど、水曜日は亜結の会社がノー残業デーなので会いやすい。


「今度は何鍋にしようか」

帰ってからネット検索してみよう。
やることが出来て、ちょっとだけ気分が上がる。

浩生を誘えなかったことで、ご飯を作る意欲も消えてしまった。
スーパーのお惣菜でさっさと済ませてしまおう。



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