謝罪のプライド
土曜の夜、もう寝ようかという頃に浩生はやって来た。
相変わらずチャイムも鳴らさないので、一瞬泥棒かと思ってドキッとする。
休日出勤は本当だったらしく、スーツ姿の彼は入るなりネクタイを緩めた。
「初音、なんか食うもんある?」
「今から? 太るよ」
パジャマ姿をみられるのもなんだかすっかり慣れてしまった。
先日の亜結の話を思い出して、そこから恋のときめきが生まれたことを少しうらやましく感じる。
私のこんな格好にも、浩生は全く反応を示さない。
「太ってもいいよ。腹減った」
上着だけを脱いでドカリと座り込む。ベッドを背もたれにされたので振動が体にまで伝わった。
私は小さなキッチンまで行き、冷蔵庫の中を覗き込む。今日は休みだったから、色々作り置きはした。
「カレーとか冷凍したけど、流石に重いよね」
「そうだなー。うどん食いてぇな」
「んー、分かった」
面倒臭いが仕方ない。
久しぶりに二人きりになれるのは嬉しいし、折角だから機嫌の良いまま過ごしたい。
あわよくば亜結の話をして、浩生の結婚観を聞けたら……なんて野望もある。