謝罪のプライド
「私、お手洗い行ってきますねぇ」
美乃里が立ち上がる気配がして、私は思わず慌てた。
ここで見つかったら気まずい……っていうかどんな顔したらいいか分からない。
「や、どうしよ」
オロオロと辺りを見ていると、空気で察知してくれたのか数家くんが私の腕を掴んで引っ張った。
「こちらへどうぞ」
雪崩れ込むように厨房に入る。
美乃里はそんな私達には気づかず、鼻歌を歌いながら化粧室へと入っていった。
「ご、ごめん」
「いえ、何かワケありです?」
「うん。……いや。うん」
なんて説明したらいいものか。
今日は平日だし、私だって研修中には浩生にご飯に連れて行ってもらったことくらいある。
ヤキモチ焼くなんておかしいし、偶然なんだから声をかければいい。
なのに、変な顔しか出来なさそうで顔を合わせたくない。
「……とりあえずこれ出してきちゃいますんで、ここにいてもいいですよ」
「でも」
「それともお席に戻られますか?」
厨房の入り口でじっとしているのは邪魔だ。
それに、戻らなきゃ亜結たちにも失礼だ。
わかってるのに、うっかり浩生と顔を合わせたらと思うと動けない。
「……待っててくださいね」
数家くんは、私を厨房の奥の椅子に座らせると、店内に出て行った。