謝罪のプライド


『七尾さんもご一緒の方と最後まで食べてから仲良く帰っていったから』

それを聞いてホッとする。

亜結は【満腹ー。美味しかったよー】ってメールくれたけど、途中で私が抜けたことで嫌な思いさせてたらどうしよって思っていたから。
亜結のことまでちゃんと見ていてくれるなんて、数家くんって気遣い屋さんだなぁ。


「ありがとう。安心したよ。数家くんって気が利くんだね」

『そう? 憧れの君にそれを言われるのは嬉しいな』

「はぁ?」


目の前のローテーブルに思わず唾が飛んだ。ティッシュで拭きつつ耳を澄ますと電話の向こうはしばしの沈黙。

ちょっと、なんとか言ってよ。
ここで黙られると笑い話にならないんですけど。


『……高二の時さ、新沼さん学級委員やってた時あったでしょう』

「うん」

『修学旅行の時、新沼さん、バスの中で皆に目を配ってて。席の配置換えとか酔い止め配布とか、色々気を使ってくれたじゃん』

「……そうだっけ」


覚えてないけど。学級委員はやった。
もともと世話好きではあるし、人に頼るのも苦手だから、自分で何でもやってた覚えはあるけど。

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