謝罪のプライド

「意識操作って、人聞き悪くない?」

『はは。そういう意味じゃないけど。その時、言葉ってそういうふうにも使えるんだなぁって思ったのが始まりなんだよね。言葉で、人の意識を向く方向を変えさせることもできる。俺はそれが面白いって思ったんだ。そしてそれを難なくやった新沼さんを尊敬した。だから、君は俺の憧れだったんだ』


「は、はあ」


そう。そういう意味ね。
びっくりした。憧れなんて言われちゃうと恋愛のほうで想像しちゃうじゃないの。


『だからまた会えて嬉しかった』

「あ……。あはは、ありがとう。でも今は数家くんのほうが凄いよ。いつ行っても雰囲気いいし落ち着くし。あの空気は数家くんたちが作ってるんだもの」

『……ありがと』


染み入る感じの声を出すのは止めてください。
なんだかドキドキしてしまう。

別に何があるわけでもないのに後ろ暗くなって、落ち着かなくなってきた。

とそこで、鍵穴が回る音と扉が開く音がする。

げ、浩生だ。
うもう、呼び鈴くらい押してよっていつも言ってるのに!


「あ、ごめん。人が来たから」

『……彼氏?』


数家くんからは怪訝そうな声。
思わず頷いたけど、電話なんだから見えるはずもない。

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