Special Magic !



その手紙は私宛てだった。

綺麗な文字で綴られたソレは、
驚くほどすぐに私の心の中に入ってきたの。


誰かから来たのか、書いてなかった。

だけど小さい頃あったことがあるらしく、
私もぼんやりと思い浮かぶことができた。


背が高い黄色い花が一面に広がり
その中心で私と、誰かが、笑いあって

大きい銀色の月が、もう地上に着くんじゃないかって程近くまで迫っていたの。



何か、約束……したの。
何か、一緒に……大切な。


その手紙がきっかけで
私はその人と文通を始めた。


名前は教えられないらしい、
だから『キミ』って手紙の宛先に書いている。


それでね、
手紙を支えに魔女の森で過ごしていたの。

前よりずっと楽で頑張れた。



だけど、ある日

私は魔女の森で伝統である夏至祭の主役として出ないか、って誘われたの。

おばあちゃんや魔女の森の人達に。


みんな、私を期待の目で見てきた。

みんな、私に期待していた。

みんな、私が魔女の森を継ぐのを望んでいた。


おばあちゃんみたいに、私はなれないのに。

魔女の森は結構広いんだよ?
その広い土地に住む全ての人達の
期待にこたえて、
その人達の命を背負って、
魔女の森を支えて、

なんて…出来るわけないじゃん。

少女漫画を片手にクッキーを食べている方が好きな私に

みんなと変わりない私に

何が出来るの?

そう思った途端、口から言葉が溢れ出た。


「いや」って
「私は長(おさ)にはならない」って

みんなは驚いた後に
これは決まりだって迫った。

「いや」って、
私は断ったの。


そしたら、

「出ていけ」って、おばあちゃんが。



私はね、だから
荷物とお金、それと切手を持って
魔女の森を飛び出した。

逃げたの。

それから世界の中心である
桃源郷に来た。



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