ずっと前から君が好き
保健室を出た俺たちは、四時間目の国語の授業をさぼって、屋上に来ていた。
屋上に来る途中で買った、バナナオーレをストローで飲みながら、蒼太が呆れ顔で口を開く。
「ったくお前"たち"は、なんでそうケンカっぱやいんだよ?」
「すみません..。....ん?」
俺は、銀と蒼太に体育の時間におこったことを話していた。
大石に言われたことや、そのときの俺が思っていたことを。
腕を前で組んで怒っている蒼太に謝りながら、俺はある事に引っかかった。
そういえば今、お前"たち"って...。
「なぁ、蒼太。俺は分かるけど、なんで銀までそうなるんだ?」
俺が疑問に思ってそう聞くと、蒼太が仰向けになって寝転んでいる銀を指さした。
「こいつ(銀)、優也が倒れたのを見て、大石たちに"何したんだよっ!!"って殴りかかろうとしたんだよ。」
「えぇ!?」
首が取れそうな勢いで銀の方を見る。
銀はムスッとした顔で言った。
「だって、あいつらがなんかしたんだと思ったんだよ~。実際そうだったしぃ~。」
「だからって話も聞かずに殴ろうとするのはどうかと思うぞ!
止める俺の身にもなれっ!周りの女子は驚いて泣きだすわ、先生は"何があった!?"って聞いてくるわ...。それにっ!普通、先生だったらまず、倒れた優也をどうにかしなきゃいけないだろっ!」
銀の発言に、蒼太はすごい怖い顔をして怒ると共に、不満を爆発させていたが、銀は臆することなく"だってさ~"とすねていた。
そして蒼太が大きなため息をつき、俺の方に向き直る。
「いいか、優也。お前が俺たちのことを言われて、怒ってくれたというのは...素直に言えば、まぁ..嬉しい、んだ...っでもだからって、もうああいう無理するなよ!分かったな!?」
「あ~!蒼、照れてる~!!」
「う、うるさいっバカ銀!」
バシッ!
「イタッ!」
「くっふふふ!!...あぁ、分かったよ。」
二人の見慣れた会話に笑いながら、俺は大きくうなづいて返事をした。
「ねぇ、蒼と優也も寝転がれば?気持ちいいよ~。」
銀に言われて、俺と蒼太も銀と同じように、アスファルトで出来た地面に寝転がってみる。
そうすると、心地いい風が流れてきた。
「おぉ~本当だ..。」
「確かに気持ちいいな~..。」
俺→蒼太..の順で感想言うと、銀は起き上って"でしょでしょ?"と嬉しそうな顔を見せた。
その笑顔を見ながら、蒼太がさっき言ったことを思い出した。
"大石たちに殴りかかろうとしたんだよ。"
俺はその言葉に驚いた。
なぜなら、銀はいつもニコニコ笑っていて、俺は怒っている銀をイメージできなかったから。
だけど、俺のためにそこまでしてくれたことが嬉しくて、俺は銀の方を見て口を開いた。
「なぁ、銀。さっきのことなんだけど。」
「ん?なに~?」
首をかしげながら微笑む銀に、俺も笑いながら言った。
「ありがとうな、大石たちに本気で怒ってくれて。」
「....っ!?..あ、あ~、うんっ。」
銀は一瞬、驚いたように目を見開いたが、すぐに目線を外してうなづいた。
そんな銀を見ていた蒼太は、"やり返し"と言わんばかりにドSな顔をして言った。
「ふっふっふ。銀、何照れてんだ?笑」
「ほ、ほっといてよっ...!」
銀は真っ赤になった顔を隠すように、俺たちに背を向けて立ち上がった、が...。
「いや、ほっとかない。いつもの仕返しだ!」
俺の左にいた蒼太も立ち上がり、銀を追いかけ始めた。
そして、俺たちが屋上で騒いでいるうちに四時間目の授業が終わりを告げた。