バターリッチ・フィアンセ
達郎がアパートを訪ねて来たのは一週間後のこと。
こっちから連絡したわけでもないのに、まるで俺の腐りかけてる心境を察したかのようなタイミングでの訪問に俺は驚き、同時に少し救われた。
仕事もせずにただ家に居て、自分と向き合わなければならないことは、今の俺にとってかなり苦痛だったから。
でも……なんでこの場所がわかったんだろう。
「達郎、どーしてわかったんだ? 俺がここにいること」
「俺は昴の行動範囲くらい知り尽くしてんだよ。つか、お前一体何に追われてるわけ?」
「追われてる……?」
達郎を部屋の中に招きつつ、そのガタイのいい背中に問いかける。
「昨日、うちのペンションに怪しい黒服の奴が来てさ。“この人、ここに来てませんか?”って、昴の写真見せてきたんだ。
“ソイツなら東京でパン屋やってます”って答えたら、その店は今閉まってて店主は行方不明だなんて黒服が言うもんだから……俺もみーちゃんも心配したっつの」
「あー……悪い」
その黒服は……きっと、織絵か三条家の誰かが差し向けた探偵か何かなんだろう。
それにしてもわざわざ山梨まで出向くとは……金のある奴のすることはわからない。
俺のことなんて、放っておけばいいのに――。
絨毯も何も敷いてない裸のフローリングに達郎を座らせると、俺は数日前に買って未開封のままだったペットボトルのお茶を冷蔵庫から出して差し出す。
「……ぬるっ」
「あー。冷蔵庫、電源入れてないから」
「なんだそれ、ちゃんと食ってんのかよ」
「……今日はまだ何も」