バターリッチ・フィアンセ
達郎は怪訝な顔をしてポケットからスマホを取り出し、時間を確認すると渋い顔で俺に言う。
「もう午後三時だぞ」
「……でも腹減らないし」
店をやってた時だって、朝と昼を抜くことくらいよくあった。
ちゃんと食べるようになったのは、織絵が来てから……そう、思いかけて、すぐに思考を占領してしまいそうな彼女の面影を慌てて追い出す。
「……やっぱりさ。あの子となんかあったんだろ?」
なのにデリカシーのない達郎は、直球でそんなことを聞いてきた。
ズキンと胸に走る痛みは、この一週間で薄れるどころか増すばかりで……傷口はさらに大きく、腫れあがっている気がする。
「……別れた」
ぼそりと俺が告げると、達郎はさして驚いた風でもなく、ただ小さなため息をついた。
「やっぱりか……。黒服の話を聞いてみーちゃんが真っ先に言ってたんだ。
“もしかしたら、織絵さんとなんかあったんじゃないか”って」
「……女の勘ってやつ? そういや、今日美和は?」
「なんか体調悪そうだったから置いてきた。でも、お前のことはすごい気にかけてたよ」
「……じゃあ美和にも言っといて。とりあえず生きてるから平気だって」
「そんな報告じゃ、俺がみーちゃんに怒られるって」
……はは、その光景、簡単に想像できる。
俺は普通に笑ったつもりだったが、達郎は眉間に皺を作り、こんなことを言う。
「やっぱ、お前やばいって。変だぞ、笑い方」
「……別にいつもと同じだろ」
そう言ってもう一度笑ってみせるが、達郎の刻んだ皺はますます深くなるばかり。
俺は一体どんな顔してるんだ……?