風の詩ーー君に届け
「今まで自由気ままに弾いてきたのに、プロの世界で簡単に通用するとは思っていません。

オケの演奏に合わせて、指揮者の要求に応え、たくさんの楽器を相手に……。

それだけの技量をたった半年で身に付けられるほど、器用ではありませんし」




「……謙虚だな。コンサートであれほど、見事な演奏をしながら……。

お前のコンサートはほぼ全て聴きに行ったし、幾つか評論を見たが、どれも絶賛していた。

実際、評価に値する演奏だとも思った」




詩月は失笑し、鞄から楽譜を取り出した。




「前回のコンサートでアンコール用にもらった楽譜です。

当日、開演前に渡され、殆ど目を通せなかった……」




詩月は楽譜を広げ、黙ったまま睨むようにみつめる。



< 33 / 372 >

この作品をシェア

pagetop