真夜中の魔法使い
「もふもふ!ああ、ウチで飼えたらなあ・・ってきゃあっ!!」
黒猫が気持ち良さそうに目を細めたその時、一瞬にして視界が暗転した。
「なんで、学校にいたはずなのに・・・!」
先程まで見えていたものが何一つない、真っ暗な空間だ。
無駄だとわかっていながら、キョロキョロとあたりを見回していると、何者かに強く腕を掴まれた。
「うわっ」
しかしその人物はそれ以上何もすることなく、ひとりでに声を上げて離れていった。
ふう、と一息つくと今度は目を閉じて魔力を探る。
どうやら腕を掴んだ相手はいなくなったようだ。
しかし、依然として周囲は暗いままだ。
この空間はいなくなった人が作り出したのではないのだろうか。
「どうしたらいいんだろう・・・」
ダメもとで杖明かりを灯してみる。ぼんやりとした明かりは、絶対的な暗闇の中で心もとない。
「空間ごと閉じ込められちゃうとは考えてなかったな。ははっ。」
こんな状況なのに、なんだか笑えてくる。
コートのおかげでかろうじて一人追い払うことができたが、状況は良いとは言えない。
結局、自分の考えなんて未熟で、現実の世界では、思い描いているようには通用しないのだ。
「すぐに帰るって、約束したのにな。」