真夜中の魔法使い
「ほんとにどうしよう・・・
アキとお兄ちゃんが心配する前に戻らないと。」
2人をこれ以上危険に巻き込むわけにはいかない。
ミユウは考えを巡らせた。
この場合、むやみに呪文を放つのは賢明ではない。
かえってそのエネルギーを吸収してこの結界が強くなる可能性もあるからだ。
「にゃー」
「猫ちゃん!?」
微かに、猫の鳴き声が聞こえた。
この空間に閉じ込められた時のことを思い返してみる。
あの時、ミユウの手が猫に触れていた状態だったので、一緒に来てしまっていたとしてもおかしくない。
声が聞こえた方向に、そっと歩き出す。
それほど進まないうちに、杖明かりに反射して、黒猫の目が一瞬ギラリと光った。
「あっ!」
なぜだか黒猫の黄色く輝く目に視線が釘付けになって、離すことができない。
そしてそのまま、自分の身体が強烈な力に引っ張られるのを感じた。
目まぐるしい状況の変化を飲み込めないまま、咄嗟に抵抗しようにも、うまく魔法が発動できない。
さらに悪いことに、自分の意図に反して転移させられるのは気持ちがわるい。
自分自身のコントロールを失ったような、不快感と恐怖に襲われる。