喩えその時が来たとしても
『四十九日? ああーあ。そうか、そうだった。ハム太郎は形見分けの日に買ったんだっけ。四十九日の法要の帰りにペットショップに寄ったんだ!』
「思い出したか哲也。そのように、転生するにも決まった約束事が有る。だから俺があのペットショップに行けるのは明日なんだ……それなのにてめえときたら『使えねえクソ兄貴』とかヌかしやがってよお、それで一刻も早く『夢枕』に立ちたかったんだが、そのお許しが出たのが今日でな」
夢枕に立つのは現世に働き掛ける行為なので、事前に霊界からの許可を取らなければいけないらしく、その申請も行動計画書を書く事から始まって多岐に渡るそうで……許諾申請提出から認可まで、ひと月程掛かるのだそうだ。
だがこれで解った。なるほどそういう事だったのか。だから怒りに任せて荷物を投げ散らかしたのか。姿が見えなくなってから今まで散々な物言いをして、兄貴には悪い事をした。
『済まない兄貴。俺はてっきり、もうこのまま運が尽きて死ぬんじゃないかと思って……自棄になってたんだ……』
「まあ尽き掛けである事は間違いねえな。すぐに処置しねえと大変な事になる……ってもう時間だ。それにしても、さっきの地震、凄かったよな。じゃあな哲也」
『……地震? 兄貴がやったんじゃないのか? この荷物……おい、兄貴。兄貴ってば!』
俺の必死の呼び掛けも虚しく、足元の気配がすうっと無くなるのが解った。荷物が落ちてきたのは兄が起こしたポルターガイスト現象のせいではなく、地震が起こったからだった。俺は手を動かしてみた。今までの事が嘘みたいに何の問題もなく動いた。
「助けてくれ~え」
声も普通に出る。どうやら兄貴は霊界に帰ったらしい。するとドタドタと足音がして、両親がやって来た。
「哲也、大丈夫か。無事か? あああっ!」
俺の部屋のドアを開け、なだれ落ちてきた荷物に襲われる父。
「お父さん、大丈夫ですか。無事ですか? ああああっ!」
荷物なだれの第二波に襲われた母。馬場めぐみの家族も面白いが、うちの家族もなかなかどうしてケッサクだ。
そうして両親の必死の救助活動の末、俺は荷物の山から助け出された。
「どうも有り難う、助かったよ。それはそうと、この機会に話しておきたい事が有るんだ」
俺は『幸運の招き猫』と呼ばれる由縁から始まり、めぐの事·ハム太郎の事·そのハムスターが兄貴の生まれ変わりだった事·運袋の事迄、夜が更けるのも忘れて話した。