ロスト・クロニクル~後編~

 王家の盾となる者は、軟弱物ではいけない。

 常に強く、常に冷静に――

 それが、フレイの考え。

 このような頼みごとをしたが、誰かに頼ってばかりはいられない。これから先あらゆる面の知識を吸収し、それを成長に繋げないといつまでたっても半人前のままで前進できない。それに今回はシードに頼み込み口止めの約束を取り付けたが、彼が言っているようにこれができるのは一回のみ。

 同等の出来事が発生した場合、今度こそ親衛隊を除隊しないといけない。エイルは親衛隊の一員として王家に仕えることを第一の使命と考えているので、除隊は避けないといけない。本音を曝け出すエイルにシードは口許を緩めると、時折本音を言い溜まった物を出した方がいいとアドバイスする。

「参考に致します」

「真面目なのはいいことだが、それが時として足枷となってしまう。それでは、本来の力を出せない」

 与えられた立場を受け入れ、使命として全うする。真面目は素晴らしいことと考え、自分が有するキャパシティ以上の力を発揮しようと努力し続けた。しかしそれが自分自身を追い詰め、精神面を潰してしまう。まさに以前のエイルのようで、シードは昔の自分のようだと話す。

「意外です」

「何故だ?」

「隊長は、素晴らしい方です。父の後を立派に受け継いで、このように隊を率いていますし……」

「だが、過去は違う。悩み苦しみ……それに誰もが最初から、完璧に物事ができるわけではない。私とて、何度も躓いた。躓いた中で正しいやり方を見付け、学習もしていった。だから、そのようにしていけばいい。君だけではない、あの二人にもそう言っておいてくれ」

 シードが言っている「あの二人」というのは、アルフレッドとシン。エイルを含め二人にも期待を置いているので、これからの成長が楽しみという。シードの温かい言葉にエイルは頭を垂れると、隊長自らそのようなことを言っていたと話したら彼等が嬉しがると返す。

「有難いお言葉、痛み入ります」

「今、それしか言えない」

 しかしエイルにとって、それで十分であった。自分の周囲にいる者達からの心遣いに嬉しさが込み上げてきたのだろう、表情が徐々に緩んでいく。彼の屈託のない笑顔にシードは満足そうに頷き返すと、心の中で「流石、フレイ様の息子」と、彼の態度を評価するのだった。
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