ロスト・クロニクル~後編~
シェラが病に臥せっているので、国民の前に姿を現すことができない。それがクローディアの国民が知っている女王についての情報だったが、現実は想像以上に残酷だった。なかなか受け入れることのできないアルフレッドは、何を思ったのかシェラに触れようとする。
しかし、寸前でシードに制されてしまう。それでもアルフレッドの気持ちも理解できるのだろう、行動を咎めることはしない。そしてシードは頭を振り、これが事実だということを伝える。
アルフレッドの一連の行動を動揺しながら眺めていたシンはシェラに視線を合わせ、女王の姿を凝視する。シェラの美しい顔には表情が無く、また瞳には全く生気が宿っていない。
一流の職人が丹精篭めて作り上げた人形なのではないかと錯覚を覚えるが、シードが部下相手に悪戯を行うわけがない。それに微かに胸元が動いているのは、呼吸をしている証拠。
何故。
どうして。
現実を受け入れるのに時間が掛かっているのか、アルフレッドとシンの動揺は続く。一方、父親からシェラの状況を聞かされていたエイルは冷静な一面を取り続けているが、いざ精神を病んでいるシェラを目の前にすると、心音は早まり長く相手の顔を見続けることができない。
「お前達に、話がある」
徐に、シードが口を開く。彼が語る話は、シェラはクローディア王家の唯一の生き残りであり、彼女が亡くなった時、王家直系の血筋が途切れてしまう。だから自分達が命を懸け、彼女を護らないといけない。それがクローディアの未来に繋がると、シードの言葉が続く。
だが、重い内容を語るのは辛かったのか、一度言葉を止め嘆息する。その後、彼が語ったのはクローディアを裏で支配しているエルバード公国について。その国の公子ミシェルがシェラを狙っており、シードは部下達にシェラをミシェルに取られるわけにはいかないと強い口調で言い放つ。
「……隊長」
「現在、危ういバランスの上でこの国は成り立っている。しかし、公子がシェラ様を娶ったら……」
「乗っ取られます」
シードの発言に応えるように、エイルが自身の意見を述べる。彼の真実を見抜く正しい解答にシードは頷き返すが、アルフレッドとシンは項垂れ母国が置かれている状況を嘆くが、親衛隊の一員というプライドが彼等を支える。それでも脚は奮え、二人の顔色は悪かった。