ロスト・クロニクル~後編~

「何故……」

「今は、過去を悔やむ時ではない」

「現実を現実として受け入れ、自分達が行うべきことを行う。で、宜しいでしょうか……隊長」

「そうだ。今、我々ができるのは王家の盾となってシェラ様を護ることだ。それが、国の平和に繋がる」

 だが、シードは肝心のことを口にはしていない。シェラが本当に回復できるかどうか見込めない今、エルバード公告を跳ね返しても明るい未来がやって来ることがない。国に平和が訪れても、いずれ失われるのは直系の血。たとえシェラの身を護っても、彼女は婿を迎えることはできない。

 しかしそれは遠い未来の出来事なので、今直面している問題を解決しないといけない。だから肝心の部分を伏せ、部下達に背負うべき事実を受け入れそれに立ち向かわないといけないと話す。

「クローディアに忠誠を誓います」

「お、俺も」

「私も同じです」

 エイルの意思に続くようにアルフレッドとシンがクローディアに永遠の忠誠を近い、同時にそれぞれがシェラの前で跪く。勿論、シェラが反応を示すことはなく一点を見詰めるのみ。

 シェラが精神を病んでいるので反応がないと頭では理解していたが、それに感情が伴わない。シェラの無表情を見ていると、今まで冷静さを保ち続けていたエイルの心がざわめき揺らぐ。シード同様に何もできない無力さを痛感しているのか、エイルは纏っている親衛隊の服を強く握る。

「……隊長」

「どうした」

「……いえ、すみません」

「何か言いたいことがあるのなら、言っても構わない」

「本当に、何も……」

 無理矢理言葉を封じるエイルであったが、シードは彼が何を言いたかったのかは瞬時に悟る。エイルが尋ねたかったことは、シェラの病状をいずれ国民に明らかにするかというもの。今は隠していられるが、それを長く続けるわけにはいかない。また、いずれ公になってしまう。

 その時、何も知らされていない国民はどのような反応を見せるだろうか。それに上手くクローディアからエルバード公国の人間を排除することができた時、上手く国を建て直すことができるか。エイルは項垂れると、アルフレッドとシンに気付かれないように口許を動かす。
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