ロスト・クロニクル~後編~
唯一エイルの言動に気付いたのはシードで、彼が何を発したのかハッキリと聞き取る。その発言は切なくて心苦しいもので、シードはエイルの耳に届く程度の声音で彼の名前を呼ぶ。
シードの声音に、エイルは力無く隊長の顔に視線を合わす。しかし先程のような覇気は感じられず、弱弱しい。シードはエイルの心情を理解している。しているからこそ彼の言動は居た堪れない。
エイルとシードが沈黙を続けていると、跪いていたアルフレッドが立ち上がり口を開く。彼が語るのは、どうして親衛隊の一員になることを選択したかというもの。最初は自身の家業を継ぐのを拒み「剣で身を立てる」という理由で親衛隊の試験を受けたが、今は明確な理由ができたと話す。
それは、クローディアの女王シェラをこの身で護っていくというもの。これこそ「肉の壁」になることを大々的に宣言したもので、シードとリデルがアルフレッドを入隊させた理由が現実となる。
アルフレッドの宣言に、シンも慌てて自分の意思を告げる。未熟者の新人隊員ができることには限度があるが、やらないよりは何倍もいい。またシンも王家に対しての忠誠心はアルフレッドに負けず劣らず高く、シェラの状況を目撃していながら彼女を見捨てるほど冷たい人間ではない。
「……有難う」
「隊長?」
「いい部下が、入隊した」
「時折、隊長に迷惑を掛けますが……」
「早く成長するように」
「了解です」
アルフレッドとシンは力強く返事を返すが、エイルは跪いたまま動く気配はない。友人の異変を感じたアルフレッドはエイルの肩を叩き、どうしたのか尋ねる。肩を叩かれる刺激にエイルは別の世界に飛んでいた意識が戻り、恐る恐るアルフレッドの顔を凝視し「何?」と、問う。
「ボーっとして、どうした」
「いや、何でも……」
「疲れたか?」
「……大丈夫」
「それならいいが」
シェラとの謁見によって肉体的な疲労が蓄積したというより、精神面での疲労が強いエイル。だが、彼等に悟られてはいけないと気丈に振舞い立ち上がる。そしてシェラに向かって頭を垂れるが、彼女の顔を見ているのが辛いのか決して視線を合わせようとはしなかった。