ロスト・クロニクル~後編~
自分自身の能力を低く見ているエイルに、アルフレッドは最高峰と呼ばれているメルダースを卒業したのだから、もっと自信を持った方がいいと励ます。その意見に対しエイルは頭を振ると、メルダースで学んだのは最低限の知識で、応用に至るだけの人生経験が乏しい。
それに父親は立派過ぎる人物で、多くの者から信頼されている。また親衛隊隊長の地位を譲って尚、影響力が強くエルバード公国の中にはフレイの行動に目を向けている者もいる。それだけの人物の手助けをできるようにならないといけないのは、正直プレッシャーが大きい。
最終的には、父親を越えてほしい。それがフレイの思いだが、願いが叶うのは遠い未来の出来事。苦笑しながら話すエイルに、アルフレッドは腕を組みながら父親が偉大だと大変なんだと言い返す。しかし何処か他人事であったが、彼の親は牧場の経営者なので立場が違う。
「お前の話を聞いていると、貴族の坊ちゃんにならなくて良かったと思う。面倒なことばかりだな」
「それに、似合わない」
「酷いことを言うな」
「どちらかというと、牧場でのんびりと仕事をしている方が似合う。といって、剣が合わないわけじゃない」
「言い方が、引っ掛かるな」
「細かいところは、気にしなくていいよ。今の親衛隊の姿も似合っているし、志は立派だよ」
貴族の坊ちゃんで尚且つメルダースを卒業した立派な人物にこのように褒められると、全身がこそばゆくなってきたのかアルフレッドはエイルの言葉を真に受け照れ笑いを見せた。素直すぎる彼の反応にエイルは苦笑すると、羊の毛刈りの後に父搾りをするのか尋ねる。
「やるか?」
「言っていただろう?」
「よし! 別の場所に行こう」
アルフレッドに促され、牛が飼育されている場所へ向かう。その途中、広い牧場を見回しながら時々でもいいから手伝った方がいいのではないかとエイルはアルフレッドに指摘するが、彼の反応はいいものではなく、どちらかといえば親衛隊の仕事の方をずっとやりたいと話す。
勿論、アルフレッドの気持ちもわからなくもない。しかしこれだけの広い敷地を二人でこなすには体力的にきつく、誰かに手伝ってもらわないと倒れてしまうのではないかと、彼の両親を心配する。流石にそのように言われると心苦しくなってきたのか、アルフレッドの表情が変化していく。