ロスト・クロニクル~後編~
この調子だと両親の言葉を待っていたのだろう、アルフレッドは両腕の袖口を捲り上げると、両親の手伝いをしだす。アルフレッドが手伝ってくれたことにより作業は順調に進み、瞬く間のうちに酪農品が作り出される。家族だから息が合うのだろう、エイルは感心する。
目の前で、三人が慌しく行き来する。邪魔になってはいけないと遠巻きで、作業を眺める。ほのぼのとした家族団欒の光景は見ていて微笑ましいものがあり、名門と呼ばれる一族の名前に縛られ生きている自分より余程いい暮らしをしていると、アルフレッドを羨ましく思う。
「なあ、アルフレッド」
「あん?」
「いい風景だ」
「何、言っているんだ」
「照れなくていいよ」
そのように言われても、面と向かって真面目な発言をされて照れないわけがない。珍しくアルフレッドが動揺しだすと、作業していた道具を頭上で振り回しながらエイルに抗議していく。しかしその抗議さえも面白いものなのだろう、エイルは悪戯っぽい笑顔を作るだけ。
「何をしている」
「こ、こいつが」
「だからといって、暴力はいけません。これで彼を殴ったら、貴方は犯罪者になってしまう」
「そうだぞ」
アルフレッドの両親に同調するかのように、エイルが言葉を続けていく。自分の両親とエイルの三人からの総攻撃に、アルフレッドは反論する気力を削がれてしまう。頭上に振り上げていた道具を下ろすと報われない状況を嘆き、天を仰ぐ。そして、止まっていた作業を再開する。
落ち込んでいるアルフレッドの姿を見ていると「やり過ぎ」という感じもないわけではなかったが、エイルは現在の状況を受け入れ楽しむ。彼にとって牧場の生活は有意義なもので、内に溜まっていたもやもや感が徐々に晴れていく。また、悩んでいたことがスッキリする。
有難う。
感謝している。
照れが強いので、感謝を言葉に表すことはしない。エイルは悪戯っぽい笑みから満面の笑みに変えると、目の前の光景を眺めながらクヨクヨしていてもいいことがないと思いはじめる。何があっても、それに向かって立ち向かわないといけない。たとえその先に、厳しい出来事が待っていようが――