当て馬ならし
だから、今日は一人で朝稽古している。
「ご武運を・・・」
昨夜のうちに出発したという
彼らに祈りをささげていると
カサっと草を踏む音がした。
もしかして、
彼らの代わりに来てくれた兵士かな?
と思って振り向くと

風に煽られて
はためく夜色のローブが
異質な存在感を放つ。

長身な細身の体、
なびく黒髪は朝の光に
青く濡れたように揺れる
眼鏡のレンズが
光を反射して目線は伺えない

早朝に見るとは思わなかったその色に
一瞬・・・血を吸って生きるという
永遠の時を持つ魔物を
想像してしまうほどだった。
灰になるのでは?
そんな想像をしている私に、
ラル王子はふらりとゆれながら
低くいつもより枯れた声で呟く
「眠い・・・」
面倒くさいが前面に現れて、
それをまったく隠す気がない
そして草の上にすとんと
胡坐をかいて座る
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