ガラスの靴じゃないけれど
自分だけではなく、この出会いに運命を感じてくれたことを知った私の心は温かな喜びで満ち溢れた。
「響さん。それから若葉ちゃん。私こそあなたたちに感謝しているわ。本当にありがとう」
祖母の瞳から一筋の涙が落ち、頬を伝う。
その祖母にハンカチを差し出したのは、口を真一文字に結んだ祖父だった。
「思い出に浸っているところ悪いが、少し妬ける話だな」
祖母の夫である祖父にとって、シエナでの出来事は楽しい話ではなかったかもしれない。
でも、結婚をしてから数十年経った今でも過去の話に嫉妬できるなんて、祖母を心から愛している証拠。
その祖父の心中を察したのだろう。
祖母は差し出されたハンカチで涙を拭うと、みんなの前で大胆なことを口にした。
「私の運命の人はあなただけですよ。博さん」
その愛情を示すように祖母がシワ立つ手を重ねると、祖父は耳を赤く染めながら大きく咳払いをする。
「この続きは部屋でゆっくりとな」
彼のお爺様が果たせなかった夢を引き継いでから、数十年。
ようやく持ち主の元に戻ったパンプスが光り輝いて見えるのは、私だけではないはず。
彼に視線を向けると、目を細めながら満足そうにパンプスを見つめていた。