ガラスの靴じゃないけれど


その中でも私が惹きつけられたのは、シルバーのミシン。

小学生の頃、家庭科の授業で触ったミシンと違い、レトロ感いっぱいのそのミシンはオシャレなオブジェのよう。

扉に手を添えて、片足立ちをしたまま物珍しい靴屋さんの様子を見回していると、彼が私の元に戻ってくる。

そして、無言のまま軽々と私を抱えると、物で溢れている店の中を移動し始めた。

人生二度目のお姫様抱っこは、やはり心地良い。

けれど前回と同じく、その時間が長く続くことはなかった。

彼は作業台の横の椅子に、私の身体をふわりと下ろす。

そして私に預けていた、舐めかけの棒付きキャンディーを手にすると、それを口にくわえた。

「ほら。貸せ」

「あ。はい」

私は催促されるまま、無残な姿になってしまったパンプスを彼に差し出した。

「ああ。それから、それも脱げ」

それって?まさか?オシャレをしてきた、このブラウスのこと?


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