ガラスの靴じゃないけれど


至近距離で微笑み合う私たちが向かう先は、あの場所。

乱れたままのシーツの上に身体を下ろされると同時に、彼の甘いくちづけが容赦なく私を襲った。

「......ぁ」

思わず漏れてしまった声を聞いた彼は、口元に笑みを浮かべる。

「その声...もっと聞かせてくれよ」

「...そんなこと言われても...困ります」

「そうか。それならもっと鳴いてもらうから覚悟するんだな」

昨夜の彼は、ガラス細工に触れるように大事に私を抱いてくれた。

でも今日の彼は、少しの隙もなく私を攻め続ける。

汗ばむ身体を重ね合いながら乱れる息で彼の名を呼べば、思いもよらない言葉が降り注いだ。

「若葉...愛している」

本当は私も『愛しています』と、想いを伝えたかった。

でも、彼の動きのひとつひとつに身体が敏感に反応してしまう私には、想いを口にする余力など残っておらず......。

意識が遠のいていく私の目尻には、ただ嬉し涙が伝うのだった。


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