ガラスの靴じゃないけれど


「若葉ちゃん。一緒にこのお試しコースを体験してみない?」

社員食堂でAランチ定食のエビピラフを口に運んでいると、総務部で一緒だった佐和子先輩にサービス券を見せられる。

「エステのお試し?」

「そうなの。お友達も誘って来店してくださいって書いてあるでしょ?」

満面の笑みを浮かべる佐和子先輩の左手の薬指に光るのは、一粒のダイヤが輝いているエンゲージリング。

佐和子先輩は一カ月前のクリスマスイヴに、同期の彼に念願のプロポーズをされたのだ。

「わぁ!アタシも行きたい!」

「だってブライダルエステよ。有紀ちゃんは予定ないじゃない」

佐和子先輩に冷たくあしらわれた有紀ちゃんは、思い切り口を尖らせた。

彼と無事に再会を果たし、結婚を前提とした付き合いを始めたことは佐和子先輩と有紀ちゃんに報告済み。

けれどブライダルエステに通うのは、まだ早い気がする。


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