ガラスの靴じゃないけれど
「佐和子先輩。ごめんなさい。私はそこまで話が進んでいないので」
「あっ。そうだったわね。まだエンゲージリングももらっていないのよね?それで?若葉ちゃんはいつエンゲージリングをもらうの?」
「さあ...いつでしょうね」
「もう!さっさとおねだりしちゃいなさいよ!」
佐和子先輩の左手の薬指に輝くエンゲージリングを、羨ましくないと言ったら嘘になる。
けれど今の私は、靴工房・シエナで彼と共に過ごせる時間があるだけで、充分に幸せなのだ。
「いいなぁ。アタシも早く結婚したくなっちゃいました」
「その前に、有紀ちゃんは相手を探さないとね」
穏やかで楽しい時間が終わるのは、あっという間。
佐和子先輩と有紀ちゃんと別れると、午後の業務をこなすために開発事業部に向かった。