ガラスの靴じゃないけれど


「佐和子先輩。ごめんなさい。私はそこまで話が進んでいないので」

「あっ。そうだったわね。まだエンゲージリングももらっていないのよね?それで?若葉ちゃんはいつエンゲージリングをもらうの?」

「さあ...いつでしょうね」

「もう!さっさとおねだりしちゃいなさいよ!」

佐和子先輩の左手の薬指に輝くエンゲージリングを、羨ましくないと言ったら嘘になる。

けれど今の私は、靴工房・シエナで彼と共に過ごせる時間があるだけで、充分に幸せなのだ。

「いいなぁ。アタシも早く結婚したくなっちゃいました」

「その前に、有紀ちゃんは相手を探さないとね」

穏やかで楽しい時間が終わるのは、あっという間。

佐和子先輩と有紀ちゃんと別れると、午後の業務をこなすために開発事業部に向かった。


< 256 / 260 >

この作品をシェア

pagetop