ガラスの靴じゃないけれど
最近の私が何よりも心待ちにしている時間帯は、金曜日の就業後。
「お先に失礼します」と、開発事業部を足早に後にすると、一目散にエレベーターに乗り込み会社の外に出る。
「響さん!お待たせしました!」
「おう。お疲れ様」
黒いSUV車に乗り込む私に笑顔を見せてくれるのは、もちろん彼。
金曜日の就業後に会社まで迎えに来てもらい、土日は靴工房・シエナで過ごし、日曜日の夜に家まで送ってもらう。
これが彼と私の週末ライフ。
もちろん、このことは家族も承諾済み。
年明け早々に私の家を訪れた彼が、家族に向かって事情を説明して頭を下げてくれたのだ。
一月下旬の寒空の元、彼が運転する車は順調に道路をひた走る。
でも、いつもなら高速道路に乗るために突き当りの信号を右折するはずなのに、この日彼はハンドルを左に切った。
「響さん?道を間違えていませんか?」
「いや。ちょっと寄り道をな。ほら。もう、目的地が見えてきたぞ」
彼が運転席から指さした場所は、光が丘北口商店街があった場所。