ガラスの靴じゃないけれど
「今日はこのサンプル品を履いて帰れ」
「サンプル品?」
「ああ。このパンプスは試し履き用だ」
彼が私の足元に置いてくれたそのパンプスに、そっと足を忍ばせてみる。
その瞬間。衝撃を受けた。
それはまるで私のために作られたように、ピタリと足にフィットして馴染む。
弾け飛ぶように椅子から立ち上がった私は、その履き心地を確かめるために広くない店内を歩いた。
足を包み込むような安定感は、今まで一度も経験したことがない。
気分良く店のカウンターの前まで歩いた私は、壁に掛けられている鏡の前に立ってみた。
鏡は全身を映し出ているにもかかわらず、私の視線は足元に集中する。
ヒールの高さは5センチくらい?
シンプルなデザインはオフィスでも冠婚葬祭でも、どんなシーンにも合わせやすいはず。
身体を左右に回転させたり、片足を上げてみたり、パンプスをあらゆる角度から鏡に映し込んだ私は、興奮しながら声を上げた。
「このパンプス。凄く履きやすいです!」
「俺が作ったんだ。当然だ」
彼は、ふんぞり返るように椅子に座ると、腕を組みながら余裕の笑みを浮かべた。