泣き虫王子と哀願少女
「っ! 深海、離せっ!」
「やだっ! 離さないっ!」
なぜだと言わんばかりの険しい顔で私を見つめる潤君。
「お前、こいつにひどいことされたんだぞっ!?」
「わかってるっ! わかってるけどっ……」
「じゃあなんでっ……」
「だってこれ以上殴ったら……潤君がこの学校にいられなくなっちゃうよっ」
「っ!?」
「私のために……私なんかのために、そんなのだめだよっ」
「…………」
潤君が震える拳を血が出そうなくらい強く握りしめ、やがてゆっくりと腕を下ろす。
それでも怒りさめやらない潤君は、鋭い眼光で先生を睨みつけ
「これ以上こいつに何かしたら、その時は俺が絶対許さないっ……!」
「ひぃっ……」
「くそっ」と悔しそうに呟き、渋々先生から手を離したのだった。