泣き虫王子と哀願少女


「なっ……潤……なに……言ってるの……?」



震える声で潤君に詰め寄るリカちゃん。


大きな瞳からは、大粒の涙が零れ落ちている。



果たしてこれは演技なのだろうか?


それとも……。



リカちゃんを見つめていた潤君がおもむろに視線を外し、すがりつくリカちゃんの肩を両手でゆっくりと引き剥がす。


苦しそうに眉間にしわを寄せ、やがて意を決したように口を開いた。



「俺の下駄箱に深海の悪口が書かれた紙を入れてたの……宝生、お前だろ?」

「っ!!」



途端にリカちゃんの顔が驚きで歪んだ。


口角を引きつらせながら、それでも必死に言葉を続ける。



「な……に、それ……? 潤、何……言ってるの……?」

「俺、見ちまったんだ。お前が俺の下駄箱に紙切れ入れてるとこ……」

「!?」



リカちゃんの顔からサッと血の気が引いた。


下唇をギュッと噛みしめ、握りしめた手をワナワナと震わせている。



「私……私は……そんなの知らないっ!」



リカちゃんはそう言葉を吐き捨て、教室から逃げ出そうと駆けだしたのだが



「んみゃーっ!」

「きゃっ! 痛っ! 離せっ、このバカ猫っ!!」

「シャーッ!」



ニャン太がすごい勢いで跳びかかり、その逃走を阻止したのだった。


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