泣き虫王子と哀願少女
「お前達、ここで何やってるんだっ!」
いくら教室棟から離れているとはいえ、あれだけの騒ぎだ。
近くを通りかかった人にでも聞こえたのだろう。
英語の西野先生がすごい剣幕で教室に飛び込んできた。
「な……なんなんだ、これは……」
教室を見るなり、想像以上の惨事に驚き目を丸くしたまま固まっている。
ほどなくして我に返ると
「他の先生も呼んでくるから、お前達はそのまま待っていなさいっ!」
そう言い残し、血相を変えてバタバタと出て行ってしまった。
その光景を呆然と見つめる私と潤君。
やがて ――
「大丈夫か……?」
「あ……」
心配そうに眉根を寄せた潤君が、私のもとへと歩み寄ってきた。