泣き虫王子と哀願少女
「潤君っ!?」
突然のことに驚き、そのまま硬直する私。
ドキドキドキドキ……
心臓が急激に速さを増し、胸がキューっと苦しくなる。
潤君、どどどどどうしちゃったの!?
混乱絶頂の頭は、パニック過ぎて沸騰寸前だ。
「よかっ……」
「……え?」
「よかったっ……。深海が無事でっ……」
「っ!」
抱きしめられた腕に、更にギュッと力がこもる。
恐る恐る見上げると、潤君の頬を伝った涙が、ポタリと私の頬へと流れ落ちた。
「……っ! 潤君っ!!」
その途端、私の中から先程の出来事と共に、潤君への想いが堰を切ったように溢れ出した。
「潤君っ……こ……怖かったっ……」
「うん……」
「でもっ……潤君が……来てくれて……」
「うん……」
「私……嬉し……かった……」
「うん……」
私の言葉に優しく頷く潤君。
そんな潤君の大きな背中に、私もそっと腕を回しキュッと制服をつかむ。
そうやって私達は、時が経つのも忘れてしばらく抱き合っていたのだった。