泣き虫王子と哀願少女


「潤君っ!?」



突然のことに驚き、そのまま硬直する私。



ドキドキドキドキ……



心臓が急激に速さを増し、胸がキューっと苦しくなる。



潤君、どどどどどうしちゃったの!?



混乱絶頂の頭は、パニック過ぎて沸騰寸前だ。



「よかっ……」

「……え?」

「よかったっ……。深海が無事でっ……」

「っ!」



抱きしめられた腕に、更にギュッと力がこもる。


恐る恐る見上げると、潤君の頬を伝った涙が、ポタリと私の頬へと流れ落ちた。



「……っ! 潤君っ!!」



その途端、私の中から先程の出来事と共に、潤君への想いが堰を切ったように溢れ出した。



「潤君っ……こ……怖かったっ……」

「うん……」

「でもっ……潤君が……来てくれて……」

「うん……」

「私……嬉し……かった……」

「うん……」



私の言葉に優しく頷く潤君。


そんな潤君の大きな背中に、私もそっと腕を回しキュッと制服をつかむ。


そうやって私達は、時が経つのも忘れてしばらく抱き合っていたのだった。

< 247 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop