泣き虫王子と哀願少女
「さすがにそれだけ完璧な証拠が残ってれば、いくらあの子でも逃げられないもんね」
「うん。そうだね」
「あの変な紙切れも、まさかあの子だったとはねー……」
「うん。私も驚いた」
「道理で雫の成績まで知ってたはずだわ。きっと須藤先生から聞いたんだろうね」
「う……。だよね……」
例の私のテスト順位事件を思い出しクスクスと笑っていた明里だったが、不意に真顔でポツリと呟いた。
「それで、2人はこの後どうなっちゃうの?」
「それが……」
両手でつかんでいた手すりにギュッと力をこめて、私は重い口を開いた。
「須藤先生はおそらく懲戒免職処分。リカちゃんは、自主退学って形になったみたい……」
「懲戒免職に自主退学……。そっか。そうだよね。あれだけの事件起こしちゃったら、もう学校なんて来られるはずないよね……」
「うん……」
途端に2人に重い空気が流れる。
「でもさ、リカちゃん、そこまでしちゃうほど潤君のことが好きだったってことだよね?」
「ん?そうとも言えないんじゃない? 好きでもない須藤先生とだって、自分の目的のためなら簡単にやれちゃう子なんだし」
悩む私とは対照的に、明里の答えはサバサバとしたものだった。