13年目のやさしい願い


春休みに、この春から、ここで働くって手紙をもらった。



春と言えば、3~5月。

でも、いつからとは書かれていなかったし、休暇を楽しんでいるところだって書かれていたから、

こんなに早く会えるとは思ってもいなかった。



「ちょうどよかった。探してたんだ」

「わたしを?」

「そう。ほら、薬」



裕也くんは白いビニール袋を掲げて見せた。

主治医の先生が、後で届けると言ってくれた薬だった。



「届けるように言われて、大部屋に行ったんだけど、もう帰ったって言うから焦ったよ」

「あの、……ありがとう」



……そう。

思いがけず早くに、ママが呼びに来て、大部屋から連れ出されたから。



カナが事故にあったって言われて、

わたしに付いていて欲しいからって言われて……。



「叶太くんがね、

少し前に、交通事故で救急に運ばれてきて、

意識がないから」



ゾクリと、身体が震えた。


思いがけない再会に、一瞬でも、この状況を忘れていた自分をなじりたくなる。



カナ!!

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