13年目のやさしい願い
「え? あの、……先生?」
ママから、わたしの手提げ袋を押しつけられて、戸惑う先生。
……ママったら。
通りすがりの先生に渡したりしないで、わたしに、返してくれたらいいのに。
「じゃ、頼むね! 陽菜、説明してあげて」
「え? マ、ママ!?」
ママはわたしの肩をポンと叩くと、そのまま勢いよく走り出した。
……本当に急患なんだ。
病棟なのか外来なのか、それとも救急車?
「……陽菜ちゃん?」
みるみる遠ざかるママの背中を見送っていると、思いがけず名前を呼ばれ、先生の顔を見る。
「久しぶり」
目の前の先生は……
あの頃とは違って、すっかり大人になった、
白衣を着て、お医者さんの格好をした裕也くんは、
にっこりと懐かしい笑顔を見せてくれた。
「……裕也くん」