13年目のやさしい願い
通い慣れた保健室。
鍵は開いていたけど、先生はいなかった。
『本日、一日出張。
急用の際は、内線:○○○○(職員室)へ』
「……よりによって」
カナがボヤきながら、わたしの方を見た。
「帰らない、よな?」
頷くと、カナは諦めたように、保健室のドアを開けた。
窓枠に縁取られた緑の木々が、まるで絵のように目に飛び込んできた。
薄暗い廊下から入ると、大きな窓と光に満ちた保健室は、楽しい場所じゃないはずなのに、やけに明るく居心地よく感じられた。
ベッドに横になると、カナが布団をかけてくれた。
そのまま慣れた様子で、タオルを棚から出してきて、洗面器を枕元に移動して……。
カナはいつも以上に、わたしの世話を焼く。
仕上げに、わたしの携帯電話を枕元に置くと、まだ時間があるからって、カナは丸イスを持って来て、ベッドサイドにドカッと座った。
「ハル、具合が悪くなったら、ぜったいに電話すること。授業中でもだぞ。……いい?」
「ん」