13年目のやさしい願い


「遠慮するなよ? 職員室じゃなくて、オレに電話かけろよ?」

「…………分かった」



カナが、わたしの手を取った。



「ハル。オレ、その間が心配。ホント頼むよ?」

「……ん」

「ってか、やっぱり、帰るか? 先生いないのって、不安すぎだろ?」

「カナの心配性」

「……心配されるような、顔色してるの」

「空いてる先生が、たまに見に来てくれるよ」

「……たまに、だろ?」

「寝てるだけだもん、十分だよ」




急に具合悪くなった時、間に合わないだろ……そんな事を言いながら、カナがわたしのおでこに手を当てた。



「熱? ないよ?」

「ん。ないな。……あったら、すぐに帰せるのにな」

「カナ、ヒドイ」

「……ごめん。冗談」



本気だったくせに。

そう口をとがらせると、「ごめんってば」と謝りながら唇を合わせることで、カナは続く言葉を封じ込めた。

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