13年目のやさしい願い
唇を離すとカナは、優しく笑って言った。
「ハル、目、つむって」
「……ん?」
それでも、目を瞑らずにカナを見ていたら、カナの大きな手のひらがどんどん大きくなって、わたしの目をふさいだ。
「ギリギリまで、ここにいるから、ハルは寝な」
わたしの目をふさぎながら、反対の手でカナは、優しく頭をなでる。
カナの手は、大きくて、硬くて、がっしりしていて……そして、とても暖かかった。
「休み時間ごとに来るから」
「……ありがとう」
「ずっと、側にいられたら、いいんだけどな」
「……ん…」
わたしがウトウトし始めたのに気づいてか、目をふさぐカナの手が離れていった。
寂しいな……と思う間もなく、代わりに、手のひらにカナのぬくもりを感じた。
「ハル、大好きだよ」
それから、おでこにカナの唇を感じながら、ゆっくりと沈み込むように、わたしの意識は闇に飲まれていった。