13年目のやさしい願い
今、わたしにはカナがいる。
結婚なんて考えてもいないけど、わたしの隣には、いつも、カナがいる。
……誰よりも大切な人。
「……カナ」
夢うつつで、その名を呼ぶと、
「ここにいるよ」
そんな声が返ってきた。
夢の中の裕也くんと瑞希ちゃんが遠ざかり、カナの姿に変わった。
手のひらにぬくもりを感じながら、
髪を優しくなでる手を感じながら、
小さく、
「……好き」
とつぶやきながら、手のひらのぬくもりを握り返した。
「ハル、オレもハルが大好きだよ」
耳元に優しい吐息を感じて、
不思議なくらい満たされた気分で、
わたしの意識は、また夢の世界へと取り込まれていった。