13年目のやさしい願い


次に目が覚めると、10時過ぎだった。

2時間目の真っ最中。



当然のようにカナはいない。



いないのだけど、ついさっきまで側にいてくれていたような気がして、

きっと握っていてくれただろう左手を思わず、じーっと見つめてしまった。



保健室の、やけに鼻につく消毒薬の匂いに、何となく、裕也くんの顔を思い出した。



ママでもなく、おじいちゃんでもなく、なんで裕也くんだったのかな?

……わたしの中では、まだまだ、白衣の裕也くんが見慣れぬ異質な存在だからかも知れない。

もしかしたら、ただ単に、久しぶりに会って、印象が深かっただけかも知れないけど……。

< 216 / 423 >

この作品をシェア

pagetop