13年目のやさしい願い


土曜日、ハルの熱は下がらず、意識も戻らなかった。



朝一でハルの元に行き、夜まで病室にいた。

土曜に通うことが多い空手は、先週の交通事故でぶつけた頭の再検査でOKが出るまで、しばらく休み。

だから何の気兼ねなく、思う存分、ハルの側にいられる。



それにしても、先週の今日、このベッドに寝ていたのがオレだったなんて、ウソみたいだ。

もう、はるか昔のことに感じる。



「ハル」



ハルがしてくれたみたいに、オレもハルの手を握り、名を呼んでみた。

熱が高くて苦しいんだろう。

寝苦しそうに身じろぎはする。でも、目は覚まさなかった。

意識があっても、ただ苦しいだけなら、今のまま眠っている方が楽なのかも知れないとも思う。



オレができるのは、ハルの汗を拭いたり、氷まくらを替えてみたり、点滴が終わる頃に看護師さんを呼んだり、それくらい。

それでも、側にいたかった。

ハルが目を覚ました時、できるなら、側にいてあげたかった。

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