13年目のやさしい願い
日曜日、朝イチで病室に行き、ドアを開けると、
「カナ」
と、ハルが嬉しそうにオレの名を呼んでくれた。
目、覚めたんだ!!
おばさん、連絡ちょうだいよ!
そう思いながら、オレはハルの元へと駆け寄った。
「ハル!」
病室の中に他に人がいて、ベッドサイドのイスに座る人物が、オレのために場所を譲ってくれたことに気づいたのは、まだ熱が下がらず、ほてった顔、潤んだ瞳のハルを抱きしめてから。
ベッドを起こしているくらいだから、幾分かは楽なんだろうけど、まだまだ身体が熱い。
早く元気になぁれ……なんてのんきに思っていると、
「……叶太、おまえ、度胸あるな。親と兄貴の前で、いきなりラブシーンかよ」
と、呆れた声が耳に飛び込んできた。
遠方で大学生をしているハルの兄さん、明兄の声に、オレが慌てて振り返ると、ハルんとこの一家が勢揃いしていた。