13年目のやさしい願い


日曜日、朝イチで病室に行き、ドアを開けると、



「カナ」



と、ハルが嬉しそうにオレの名を呼んでくれた。



目、覚めたんだ!!

おばさん、連絡ちょうだいよ!



そう思いながら、オレはハルの元へと駆け寄った。



「ハル!」



病室の中に他に人がいて、ベッドサイドのイスに座る人物が、オレのために場所を譲ってくれたことに気づいたのは、まだ熱が下がらず、ほてった顔、潤んだ瞳のハルを抱きしめてから。

ベッドを起こしているくらいだから、幾分かは楽なんだろうけど、まだまだ身体が熱い。

早く元気になぁれ……なんてのんきに思っていると、



「……叶太、おまえ、度胸あるな。親と兄貴の前で、いきなりラブシーンかよ」



と、呆れた声が耳に飛び込んできた。

遠方で大学生をしているハルの兄さん、明兄の声に、オレが慌てて振り返ると、ハルんとこの一家が勢揃いしていた。

< 303 / 423 >

この作品をシェア

pagetop