13年目のやさしい願い


おじさんも明兄も、ハルを溺愛している。

オレたちの仲はお互いの家族公認だけど、明兄はたまに露骨に邪魔してくる。

ハルが悲しそうな顔をしたら、速攻やめる辺り、溺愛ぶりも徹底していると思うのだけど。



「陽菜、幸せ者ね」



おばさんだけは面白そうに、陽菜に話しかけていた。



いつもは恥ずかしがり屋のハルが、今日に限って、オレの手を離さない。

抱きしめられて、オレがからわかれている時も、「離して」とも言わなかった。

そして、おばさんの「幸せ者ね」に小さく頷いて返事までしてくれた。



「……うん」



正直、嬉しい。思わず顔がにやけてしまう。

でも、あまりにいつもと違う反応に、ハルが熱のせいでどうかしちゃったんじゃないか、そっちの方が気になった。

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