13年目のやさしい願い
昔からハルんちは、おばさんもおじさんも忙しくて留守がち。
だから、ハルは自然とお兄ちゃん子になったし、明兄もハルを溺愛し、散々可愛がっていた。
5歳も離れているから、ハルと明兄が同じ学校に通ったのは、小学生の時の1年間だけ。
その1年間、明兄は常に出過ぎず、密かにハルを見守り、困った時にはそっと助けていた。
今の5歳差じゃない。小学校の6年生と1年生はあまりにも違いすぎるから、近くにいすぎるのもおかしい。
明兄の判断はきっと正しかったのだろう。同じ校舎にいられるのは、たった一年。なのに、過保護にしすぎたら、後で苦労するのはハルだから。
その頃から、明兄は見るからに賢そうで、実際、抜群に頭が良かった。
そして、今、通っているのは国内最高峰と言われる大学の医学部だ。
ハルのじいちゃんの跡を継いで、いずれ、この病院を切り盛りしていくのだと思う。
間に、多分、おばさんが入るのだろうけど。
「お兄ちゃん」
「ん? どうした?」
「大学のお勉強、忙しい?」
不意に、ハルが明兄に聞いた。