13年目のやさしい願い


いやいやいやいや。

血のつながった実の兄貴に対して、この感情はないだろ!?



そう、これは、たぶん……嫉妬。



その言葉を思い出した時、ふと、脳裏にある人の顔が浮かんできた。

抜群に頭が良くて、切れ長の目で眼鏡をかけていて、若干、腹黒系で何考えてるか分からない、オレたちより1つ年上の……。



ああ。

だから、ハル、羽鳥先輩にあんなに懐いてたんだ。



羽鳥先輩は、よくよく見てみると、明兄とかなり雰囲気がかぶっていた。

1年前、オレとハルの関係がこじれにこじれた時、ハルのことが好きなのに、ハルのことを想って、オレたちを結びつけてくれた立役者、羽鳥先輩。

そうは言っても、相手がハルの大好きな「お兄ちゃん」にそっくりときたら安心はできない。



……志穂、しっかり捕まえておけよ。



ここでも、オレはまた、情けないことに他力本願なことを考えていた。

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