13年目のやさしい願い
「これ、わたしが作った……」
「そう。思い出した?」
一ヶ谷くんは手のひらの上で、ドングリで作った素朴なコマを転がした。
あの時の一ヶ谷くんは、坊主頭で、もっとずっと幼い雰囲気だった。
今とはずいぶんイメージが違う。
「陽菜ちゃんが、院長先生の孫だって聞いて、
杜蔵学園に通ってるって聞いて、
オレ、本当はね、陽菜ちゃんを追いかけてきたんだよ」
わたしの目を真っ直ぐに見つめて、一ヶ谷くんが言った。
「相思相愛の幼なじみの恋人がいるってのも、聞いてた。
看護師さんにさりげなく聞いたらさ、笑って、陽菜ちゃんはムリよって言うんだもんな」
一ヶ谷くんの口もとが、自嘲気味にゆがんだ。