13年目のやさしい願い
ひとしきり笑った後、一ヶ谷くんはボソリと言った。
「……こっからのが、正直、話しにくいんだけどさ」
「もしかして、あの女の子の話?」
一ヶ谷くんはゆっくりとうなずき、顔を上げると、意を決したように話し始めた。
「あの子、篠塚繭子(しのつかまゆこ)って言うんだけど、オレが中学の時のクラブのマネージャーだった先輩」
「マネージャー?」
「うん。野球部のマネージャー。1つ上だから、陽菜ちゃんと同じ高2だね」
大人っぽく見えたけど、同い年だったんだ。
と、そこも気になったけど、野球部のマネージャーと言うのも、どうにもしっくり来なかった。
「やっぱり、違和感ある?」
わたし、変な顔してたのかな?
うなずくと、一ヶ谷くんは「だよなぁ」と笑った。