13年目のやさしい願い


ひとしきり笑った後、一ヶ谷くんはボソリと言った。



「……こっからのが、正直、話しにくいんだけどさ」

「もしかして、あの女の子の話?」



一ヶ谷くんはゆっくりとうなずき、顔を上げると、意を決したように話し始めた。



「あの子、篠塚繭子(しのつかまゆこ)って言うんだけど、オレが中学の時のクラブのマネージャーだった先輩」

「マネージャー?」

「うん。野球部のマネージャー。1つ上だから、陽菜ちゃんと同じ高2だね」



大人っぽく見えたけど、同い年だったんだ。

と、そこも気になったけど、野球部のマネージャーと言うのも、どうにもしっくり来なかった。



「やっぱり、違和感ある?」



わたし、変な顔してたのかな?

うなずくと、一ヶ谷くんは「だよなぁ」と笑った。

< 342 / 423 >

この作品をシェア

pagetop