13年目のやさしい願い
「野球部にカッコいい先輩がいてね、篠塚先輩、その人目当てにマネージャーやってたの」
「……なるほど」
「ははは。納得した?」
一ヶ谷くんはうなずくわたしを見て、面白そうに笑った。
「で、高校もその先輩を追いかけて行ったんだけどね、先輩にはもう彼女ができててさ」
そこで、一ヶ谷くんはいきなり話を変えた。
「篠塚先輩、広瀬……先輩に命を助けてもらったんだって?」
「え? ……うん。命までかは、分からないけど」
「篠塚先輩、運命だって言うんだよね。これは運命の出会いだって」
心なしか、苦々しい表情の一ヶ谷くん。
申し訳なさそうにわたしを見て、それから自嘲気味に笑った。
「ごめんね。運命の押し売りなんて、いらないよね。て言うか、迷惑だよね」