13年目のやさしい願い


それから、一ヶ谷くんは静かに立ち上がって、ゆっくりと、そして深々と頭を下げた。



「陽菜ちゃん、ごめんなさい」

「……一ヶ谷くん」



一ヶ谷くんは頭を下げたままに話し始めた。



「オレ、陽菜ちゃんの身体が、そんなに悪いなんて知らなかった」



え? そこ?

篠塚さんに荷担してごめんってことかと思ったら……。

わたしの予想はことごとく外れる。

そのせいか妙に頭はクリアで、一ヶ谷くんに対して腹が立つとか、憤るとか、そんな気持ちにはまったくならなかった。



「陽菜ちゃんが身体弱いらしいってのは知ってた。

でも、病院にボランティアに来てるくらいだし、そんなに悪いなんて思いもしなかったんだ。

入学式の日にも倒れたの目の当たりにしてたのに、身体弱いって言うならなおのこと、貧血なら良くあることだろうって思って……」

< 347 / 423 >

この作品をシェア

pagetop