13年目のやさしい願い
それから、一ヶ谷くんは静かに立ち上がって、ゆっくりと、そして深々と頭を下げた。
「陽菜ちゃん、ごめんなさい」
「……一ヶ谷くん」
一ヶ谷くんは頭を下げたままに話し始めた。
「オレ、陽菜ちゃんの身体が、そんなに悪いなんて知らなかった」
え? そこ?
篠塚さんに荷担してごめんってことかと思ったら……。
わたしの予想はことごとく外れる。
そのせいか妙に頭はクリアで、一ヶ谷くんに対して腹が立つとか、憤るとか、そんな気持ちにはまったくならなかった。
「陽菜ちゃんが身体弱いらしいってのは知ってた。
でも、病院にボランティアに来てるくらいだし、そんなに悪いなんて思いもしなかったんだ。
入学式の日にも倒れたの目の当たりにしてたのに、身体弱いって言うならなおのこと、貧血なら良くあることだろうって思って……」