13年目のやさしい願い


「……え?」



一ヶ谷くんの厳しい表情と怖い声。

少し怯えて一ヶ谷くんを見上げると、彼は大きく、大きくため息を吐いた。



「……諦められなくなるでしょ」

「え?」

「諦めようと思って、話しに来たのに」

「……あ」



その言葉の意味するところがようやく理解できた。



戸惑っていると、しばらくして、一ヶ谷くんは吹っ切れたように笑顔を見せた。



「ごめん。勝手に好きになっておいて、好きになってくれないなら冷たくしろなんて、ムチャ言ってるよな。

だいたいオレ、陽菜ちゃんが、こういう優しい人だから好きになったのにね」

「……あのね」

「うん?」

「わたし、別に優しいわけじゃ……」

「優しいよ」

「でも」

「優しい」

「えっとね」

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