13年目のやさしい願い


しばらくの押し問答の後に、一ヶ谷くんは深々とため息を吐いて、少し遠い目をした。



「……ごめん。オレ、何やってるんだろ? 陽菜ちゃんを困らせに来たんじゃないのにね」



それから一ヶ谷くんは、わたしを見て、優しく笑った。



「……元気になってくれて、本当に良かった。

陽菜ちゃんの顔見れて、声聞けて、話ができて、本当に良かった」



一ヶ谷くんの穏やかな表情に、気持ちがすうっと軽くなった。

気がかりだったこと、何でこんなことになってるんだろうと思っていたこと、色んなことが、今日分かった。

いろんな意味で、本当にスッキリした。



「わたしの方こそ、話が聞けて良かった。わざわざ来てくれて、ありがとう」



わたしの「ありがとう」にまた何か思ったみたいだったけど、一ヶ谷くんは今度は苦笑いするだけで、何も言わなかった。

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